重なる、重ねる


わたしのおじいちゃんは、字がとても上手でした。

わたしのおじいちゃんは、絵がとても上手でした。

これは、東海道五十三次を書き写したものです。わたしのおじいちゃんの字でも、絵でもありません。

たまたま、わたしのおじいちゃんのように、字が上手な方で、

たまたま、わたしのおじいちゃんのように、絵が上手な方で、

たまたま、わたしのおじいちゃんと同じ年の同じ月に生まれた男性の利用者が書いたものです。

がんこなわたしのおじいちゃんとは似ても似つかないほど、にこにこ笑顔の方ですが、

この方の作品が飾られていると、ふと、わたしのおじいちゃんを思い出します。

字が上手なのに、いつも眉間にしわを寄せながら練習をしていたおじいちゃん。

たった1行でもいいから、毎日日記を書いていたおじいちゃん。

ぼけないようにと、数独とにらめっこしていたおじいちゃん。

トラックでのお迎えが恥ずかしくて、いつもしかめつらな私なのに、嫌なこと一言も言わず、雨の日には家族の運転手になってくれていたおじいちゃん。

おじいちゃんとお別れして、もうそろそろ一年が経ちます。

なんだかんだいいながら、いい大人になっても、おじいちゃんとは最後まであんまり上手に話せなかった。

お別れしてからの方が、おじいちゃんを思うことが多くなりました。

 

たまたま字がお上手で、たまたま絵がお上手で、たまたまおじいちゃんと同い年の方は、わたしのおじいちゃんではありません。

それでもふと、だれかが、ここに連れてきてくれたのかもしれないと考えてしまいます。

だからといって、おじいちゃんのような方に、何か特別にするというわけではないのですが、

ここに来てくれたことに、本当に、ありがとうと思います。

 

って、わたしの、とても個人的な気持ちを書いてしまいました。